映写窓

地方映画館に勤める支配人による日々の映画の覚え書き

「永遠」の途中―――『エタニティ 永遠の花たちへ』

『エタニティ 永遠の花たちへ』

監督:トラン・アン・ユン

出演:オドレイ・トトゥメラニー・ロランベレニス・ベジョ、ジェレミー・レニエ、ピエール・ドゥラドンシャン

2016年/フランス=ベルギー合作/フランス語/カラー/シネマスコープ/1時間55分/日本語字幕:古田由紀子

配給:キノフィルムズ/木下グループ

公式サイトエタニティ -永遠の花たちへ- | 公式サイト BD&DVD 2018.3.2発売!

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© 2016 NORD-OUEST FILMS - PATHE PRODUCTION - ARTEMIS PRODUCTIONS - FRANCE 2 CINEMA - CHAOCORP CINEMA

 

 何気ない日々の「一瞬」の連続が、やがて「永遠」へと変化していく。

 『エタニティ 永遠の花たちへ』は、人間に日々の生活に潜む、かけがえのない時間へ捧げた人生賛歌だ。

 

 舞台は、19世紀末のフランス。木々や花々が生い茂る豪華な邸宅で、上流階級の家族が集合写真を撮るところから映画は始まる。

 物静かに家族構成を語るナレーションとゆっくりと移動しながら家族を捉えるカメラ。いかにも、この画面に映る家族たちが過ごす、至福で優雅な生活を反映したかのようなゆったりとした時間が流れる映画だと、てっきり思い込んでしまう。

 そんな思いとは裏腹に、物語は怒涛のテンポで進んでいく。

 主人公ヴァランティーヌのあどけない少女姿が映し出されたかと思えば、次のシーンでは親が取り決めた婚約を破棄し、しかし純粋な婚約者の思いに心を動かされ、結婚を決意する17歳の彼女(オドレイ・トトゥ)の姿が、ナレーションと映像によって語られる。

 その後も、(ほぼ)ワンシーンワンカットとナレーションで、ヴァランティーヌの結婚、8人の子供の出産、息子と夫との死別と20年間の生活が、ものの数十分で語られていく。その間に、台詞もほとんどない。

 ヴァランティーヌの過ごす生活が一瞬で過ぎ去っていくなか、物語は彼女の娘マチルド(メラニー・ロラン)とマチルドの従姉妹ガブリエラ(ベレニス・ベジョ)の二人の母親の物語へと移行していく。

 こうした「一瞬」の積み重ねによって物語が紡がれ、人の誕生と死、出逢いと別れを描くことだけに映画が終始する。劇的ななにかが起こるわけではない。それでも、自分とは生まれも身分も違う人間の物語を追体験させられ、人の営みとはこれほどまでにドラマックで壮大なものかと胸を打つ。

 やがて、三人の女性たちが過ごした「一瞬」の出来事や思い出が、地続きで今へと繋がり、「永遠」の途中に自分もいるのだと気づかされるラストシーンには心が震える。

 

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© 2016 NORD-OUEST FILMS - PATHE PRODUCTION - ARTEMIS PRODUCTIONS - FRANCE 2 CINEMA - CHAOCORP CINEMA

 

上田映劇にて今週末まで。上のリンクにはBlu-ray&DVD3.2発売と書かれていますが、劇場のスクリーンが抜群に映える作品ですので、ぜひに!

上映時間はこちらまで→上田映劇-トップページ

余談ですが、一昨年の大ヒット作『この世界の片隅に』にも通じるものがあると思う作品なので、ピンときた方もぜひ。コトリンゴさんの「みぎてのうた』を思い出たので、『エタニティ』観てから聴いていただくといいかも。

 

というわけで、こんな感じでなるべく更新できるよう、一回で終わらないようにがんばります…!