映写窓

地方映画館に勤める支配人による日々の映画の覚え書き

【映画たべくらべ】『リングサイド・ストーリー』と『南瓜とマヨネーズ』の共通点について

段、様々な映画を観ていくと、意外な角度から作品を観ることができることに気づく。

監督や俳優、好きなアーティストが音楽を担当していたり、小説や漫画の原作だったりと、それこそ百人百様の角度から映画を観ていることだろう。

 

そうした様々な観方をしていくなかで、監督も原作も異なる作品のなかに共通点を見つけることがたまにある。

 

今回は、上田映劇で上映している『リングサイド・ストーリー』と『南瓜とマヨネーズ』の共通点について、少しだけ書きたい。

 

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リングサイド・ストーリー』(2017)

 監督:武正晴

出演:佐藤江梨子 瑛太 有薗芳記 田中要次 余貴美子

〔あらすじ〕 

 江ノ島カナコには10年の付き合いになる同棲中の彼氏・村上ヒデオがいる。役者であるヒデオは7年前に大河ドラマ出演を果たしたものの、最近はオーディションに落ち続け、カナコに頼りっきりのヒモ同然の毎日を送っていた。そんなある日、カナコが勤め先の弁当工場を突然クビになってしまう。プロレス団体が人員募集していることをプロレス好きのヒデオから聞いたカナコはその団体で働き始め、少しずつプロレスの世界に魅了されていく。一方、仕事に夢中で以前ほど自分に構ってくれなくなったカナコに対し、浮気をしていると勘違いしたヒデオは、嫉妬のあまりとんでもない事件を起こしてしまう。(リングサイド・ストーリー : 作品情報 - 映画.com)より抜粋。

 

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南瓜とマヨネーズ』(2017)

監督:冨永昌敬

出演:臼田あさ美 太賀 オダギリジョー 光石研

〔あらすじ〕

 ミュージシャンを目指す恋人せいいちの夢を叶えるため、ツチダは内緒でキャバクラで働いていた。ツチダがキャバクラの客と愛人関係になり、生活費を稼ぐためにキャバクラ勤めをしていることを知ったせいいちは、仕事もせずにダラダラと過ごす日常から心を入れ替えてまじめに働き始める。そんな折、ツチダが今でも忘れることができないかつての恋人ハギオと偶然に再会。ツチダは過去にしがみつくようにハギオにのめり込んでいくが……。(南瓜とマヨネーズ : 作品情報 - 映画.com)より抜粋。

 

あらすじを読むとわかるが、二作品の共通点としてどちらも 

 ダメ彼氏とそれを支える健気な彼女モノ

だということ。

恋愛映画において、それ自体が珍しいテーマであることではないのだが、劇場側からしてみれば、決して似たテーマの作品だったから同じ時期にかけたというわけでもなく、図らずも似たテーマの作品が同時期に並んだ、という印象なのである。

 

厳密に言えば、『リングサイド・ストーリー』の佐藤江梨子演じるカナコは、正に良妻賢母が全身からあふれ出しているようなキャラクターで、正直、瑛太扮するヒデオとなんで別れないんだ…と観ているこっちが頭を抱えるほど。

反対に『南瓜とマヨネーズ』の臼田あさ美演じるツチダは、太賀演じるせいいちに音楽に没頭してほしいあまり水商売をしたり、愛人になったり、昔の恋人と浮気をしたりと、男女のキャラクターに平等にだらしなさを残しているのが特徴だったりする。

 

いずれにしても、似たテーマを描いている作品は山のように存在するし、監督の演出や編集のリズムや音楽の使い方など、必ずそこには監督の作家性が内在するものであるから、好みのテーマであったとしても自分の肌に合うとは限らない。

 

むしろ今回の場合は、映画製作者や劇場が見せたい作品という思惑を超え、

偶然にも似たテーマの作品が同時期に、しかも同じ日にスクリーンで観られるという、同時代性の稀有を味わってもらえれば嬉しい。

 

僕が二作品を観た印象としては、

リングサイド・ストーリー』は笑いあり涙ありのエンタメ性にあふれ映画的な外連味も併せ持った作品。

反対に、『南瓜とマヨネーズ』は、魚喃キリコの漫画のエッセンスを存分に閉じ込めた叙情的でエモーショナルな作品。

 

どちらの作品が口に合うか、両方合うか、それとも両方合わないか。

ぜひ試してみてほしい。

両作品が劇場で同日に観られるのは明日まで。

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